低い声で呟く

横浜市内在住、オタクな3児の母によるブログです。

「夜明け前と彼女は知らない」

平山瑞穂先生の小説です。単行本の「大人になりきれない」を文庫化にあたって改題したものだそうです。 

夜明け前と彼女は知らない (PHP文芸文庫)

夜明け前と彼女は知らない (PHP文芸文庫)

 
大人になりきれない

大人になりきれない

 

原題の方が内容に合っていると思いますが、平山先生のブログによると、大人の事情があるのだそうですよ。


文庫新刊と、それとは無関係な映画予告編: 平山瑞穂の白いシミ通信

簡単に言えば、本人は「デキる」つもり、周囲からは「イタい」「サムい」と評価されているアラサー3人の主観と客観。そしてその「周囲」ごと観察する、ある一人の後輩の冷ややかな視線。

「都会のデキる女」イメージに身を包みながらも、要領が悪く実態が伴わない野方沙耶。歌は上手いが女の子とサシカラ(サシでのカラオケ)しただけで相手が自分に好意を持っていると思い込む末松徹。気配りできるつもりの察してちゃん、既婚者だが男性にチヤホヤされたい國枝奈央子。3人をそれぞれ一言で紹介するとこんな感じでしょうか。各章の間に「黒いランチ」という、3人への悪口が渦巻く社内のランチタイム風景の描写が挟まれています。悪口は本当に毒々しいし、本人視点の各章でも彼ら自身に問題があるということがはっきりわかります。このドロドロしたイヤーな気分、苦手な人は本当に受け付けないのではと思います。初めて読んだ平山先生の小説「シュガーな俺」で、主人公が一緒に入院していた海野さん(責任転嫁男)や吉成さん(物分かりの悪いおばさん)を評する表現が容赦なく、毒々しくて「うわぁ」と思ったものですが、この本では全編にわたってそういうのが散りばめられています。私はそういうの、ゾクゾクしながら読んでしまう人間ですので……。


「シュガーな俺」 - 低い声で呟く

読みながら強く思ったのは、「新井理恵先生に漫画化してほしい!! 」ということでした。今まで読んできた数々の新井先生の作品に登場する「勘違いキャラ」が次々頭に思い浮かびました。主観と客観で微妙に見た目が違うとか(本人イメージでは美貌の沙耶が、同僚の回想ではメイクで盛っていることがはっきりわかるなど)、各章でモブの一人だった梓沢真帆が最後に心の中で毒吐きながら笑顔で退職していく場面とか、絵になるともっと面白いと思うんですよね。まぁ、最初は奈央子の語りが「ヨタ話」のさゆりっぽいな…と感じて、そこからどんどん連想が膨らんでいったんですけど。 ↓ この猫がさゆり。

ヨタ話 (Betsucomiフラワーコミックス)

ヨタ話 (Betsucomiフラワーコミックス)

 

自分もイイ年して大人になりきれているとは言い切れず、過去には色々と「イタい」「サムい」思考や行動をしてきた覚えもあり、主観と客観は食い違うものだと理解しているつもりだけど視野が狭くなってしまうことも度々あり、自戒のためにもたまに読み返したいと思っています。