低い声で呟く

横浜市内在住、オタクな3児の母によるブログです。

漫画版「青の炎」

貴志祐介先生の小説の、新井理恵先生による漫画版です。私にとってはまさに夢のコラボレーション!と、見つけたときには感動しました。表紙イラストは映画ポスターに準じたのでしょうか。ポーズは違いますが、裸で寝そべる秀一。

ページ数の関係でしょうが、ヒロイン(?)の紀子が登場しません。彼女が果たす重要な役割は、大門が代わりに担っています。いや、秀一とデートしたり結ばれたりはしませんのでご安心ください( 変なこと書いてごめんなさい)。極彩色の絵を描く人間が大門になっているということです。秀一が紀子を更正させる過程を新井先生に描いて頂きたかった!と残念に思いました。石岡との関わりと重複するということで、構成上省かれたのでしょうね。

個人的に「目の正月、目の正月」「舌は日曜日」の台詞が好きなので、これは入っていて嬉しかったです。母の料理についての解説(見た目すごくおいしそうだが、味は普通)はないのですが、秀一の表情で理解できるのが面白いです。

新井先生のファンとして印象的に感じたのは、秀一が曽根を殺す決意をする、母が曽根に襲われているのを知ってしまう場面です。新井先生が描いていることによって物語の結末が更に後味悪く感じられます。

新井先生の作品には、性的な行為にそれほど意味を見出していない人物がよく登場します。「相手に合わせてさえいればいい、会話をするよりも楽」ぐらいに考えていたり、他の何かと比べて優先度が低い(殺されるよりはヤられた方がマシだとか、お金のためには性的な仕事も止むを得ないというような)と考えている人物です。ここで登場する秀一の母がそのような思いで曽根に応じていたのではと考えてしまうのです。そうであるなら曽根が病気でもう長くないこと、遥香が曽根の実子であることと相俟って、秀一が犯行に及ぶ客観的な必要性を低下させていると言えるでしょう。

最期の朝、テレビ中継のレポーターを刺す夢を見て目が覚めるという場面は原作にもありますが、つい「×-ペケ-」の岡本夢路を思い出します。なーんてね、フフ…。

単行本のレーベルは角川書店のあすかコミックスDXなのですが、最近他社のペーパーバッグに収録されているのを見ました。宙出版の「貴志祐介ミステリー」という本で、他の収録作品(漫画)が貴志先生と関係あるのかどうか、よくわからなかったのでスルーしました。